2025年11月7日、タイの労働保護法(Labour Protection Act)が改正されました。
王立官報への掲載を経て、第9号(B.E.2568)が正式に成立。
これにより、「3つの宿題」のうち1つがついに動いたことになります。
🔍 今回のポイント
- 産休延長などの「家族支援」は 2025年12月7日から施行
- 週休2日制は1年間延期(2026年以降に再審議)
- BOI外国人役員15万バーツルール が2026年1月から実質運用開始へ
私はタイで暮らすひとりの日本人として、
この一連の労働法改正を“3つの宿題”として追ってきました。
① 週休2日制(働き方改革)
② BOI企業の外国人役員の最低賃金15万バーツ
③ 全国共通の退職金積立制度(Employee Welfare Fund)
このうち、①と③は1年延期。
そして今回、②が「動き始めた」というのが今回のニュースの核心です。
🧩 宿題その①:週休2日・週40時間制──まだ先の話です
最も話題になっていた「週休2日制」と「週40時間労働」は、
当初2025年内にも施行される見通しでした。
しかし、実際には1年間の延期が決まりました。
理由は単純です。
「現場が回らない」という声が、あまりにも多かったのです。
製造業やサービス業を中心に、
「人が足りないのに、2日も休めない」
「コストが17%上がる」
という反対意見が噴出。
委員会は、施行猶予を当初の30日から365日に延長しました。
つまり、2026年以降に再検討される形です。
タイでは、制度を「決めてから伸ばす」ことが珍しくありません。
この国は、理想を掲げながらも、現場の現実を無視しない。
それが、ある意味で**“タイ式のバランス感覚”**なのかもしれません。
企業としては、2026年のカレンダーはそのままでOK。
ただし、2027年には本格的に議論が再燃する可能性が高く、
今から労働時間とシフト設計の見直しを始める準備が求められます。
💼 宿題その②:BOI企業の外国人役員「最低賃金15万バーツ」──本格始動へ
そして今回、最も注目すべき「動き」があったのがこの項目です。
BOI(タイ投資委員会)は、外国人役員の最低賃金を月額15万バーツと定める新ルールを公布しました。
BOI通知 No. Por.8/2568 によれば、
- 新規BOIプロジェクト:2025年10月以降に即適用
- 既存BOI企業:2026年1月1日から適用開始
つまり、2026年1月以降に労働許可証(Work Permit)の期限が切れる外国人は、
このルールに直接影響を受けることになります。
現行で10〜13万バーツの給与で登録している日本人役員の場合、
- 労働許可証の更新拒否リスク
- Executive → Manager への職位変更
- 給与体系の調整(ローカル+海外送金)
といった実務的な対応が必要です。
BOI企業にとっては、まさに**2026年が“再定義の年”**になります。
給与だけでなく、「役職名」「職務範囲」「申請書の書き方」までが見直し対象となるでしょう。
表向きは制度改革。
しかし、実際には“書類の中身”こそが企業の信用を問われる局面になりそうです。
🏦 宿題その③:退職金積立制度(Employee Welfare Fund)──1年延期へ
タイ政府が進めている全国共通の退職金積立制度(EWF)は、
当初2025年10月施行予定でしたが、こちらも2026年10月へ延期されました。
背景には、中小企業側の準備不足があります。
積立負担や管理コストへの懸念が強く、
「まずは任意加入としてスタートし、段階的に義務化」という流れが見えています。
法案自体はすでに成立しており、延期は“準備猶予”にすぎません。
給与・人件費の設計には、今のうちから反映しておく必要があります。
📊 3つの宿題、いまのステータス
| No | テーマ | 現状(2025年11月時点) | 企業への影響度 |
|---|---|---|---|
| ① 週休2日・週40時間制 | 審議中 → 施行1年延期 | 中(生産性・人員配置) | |
| ② 外国人役員15万バーツルール | 2026年1月より実質運用開始 | 高(Work Permit更新直撃) | |
| ③ 退職金積立制度(EWF) | 2026年10月に延期 | 中(長期コスト・制度対応) |
💬 銀キャリの視点
タイの制度改革は、決まった瞬間ではなく、更新の瞬間に効いてくる。
今回の3つの宿題も、すぐに現場を揺るがすものではありません。
けれど、「来年どうする?」を決めるのは、今年のうちです。
特にBOI企業にとって、2026年の労働許可更新は大きな分岐点。
給与の設計も、書類の整え方も、今のうちに“理屈と根拠”を揃えておくことが重要です。
🪙 銀キャリ編集後記
タイは「急がない国」ではあるが、「遅れている国」ではない。
一度決めたルールを、きちんと運用する力を持っている。
だからこそ、私たちは“先回りして準備する側”でありたい。


🌐 銀キャリ(Ginkari)

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