1.1 再現性がない会社は、成長しない
「言った通りに動かない」──中小企業に転職してこの言葉を、どれほど耳にしてきたでしょうか。
現場の人は怠けているわけではありません。
むしろ、真面目で、誠実で、努力家です。
それでも、同じミスが繰り返され、品質が揺らぎ、成果が続かない。
その正体は、“仕組みの欠如”にあります。
人が育たない。品質が安定しない。成果が継続しない。
そのどれもが、再現性の欠如が原因です。
再現性とは、経営そのものです。
単なる「効率」ではなく、
「同じ結果を、誰でも出せるようにする構造」のこと。
経営とは、結果を個人の力量に委ねることではなく、
組織として“再現できる仕組み”を築くことです。
それこそが、企業の成長を支える“見えない骨格”なのです。
そして今、この再現性こそが、AI時代における最大のテーマになっています。
1.2 中小企業の“努力の空回り”構造
多くの中小企業には、「努力が再現されない構造」があります。
- 社長が走りすぎる。
- 属人的な判断が積み上がる。
- 暗黙知が散らばる。
どれも善意から生まれた行動です。
しかし、仕組みがなければ、その努力は瞬間最大風速で終わってしまいます。
社長が全力で走り、社員がそれを懸命に追う。
一時的には勢いが出ても、仕組みが伴わなければ風はすぐに止むのです。
現場では、こうした声が繰り返されます。
「Aさんのときはうまくいっていた」
「Bさんが抜けてから、流れが止まった」
それは“能力の差”ではありません。
“再現の仕組み”が存在しないからです。
古くから続くカウンターだけのラーメン屋さんが、
2店舗目を出した途端に潰れてしまう──あの現象と同じです。
店主の腕と勘、空気感に支えられていた成功は、
“言葉になっていない仕組み”だからこそ、拡張に耐えられないのです。
中小企業も同じです。
社長やベテランの感覚に頼り切った経営は、
拡大や世代交代の瞬間に崩れやすい。
そして、失敗の原因は明確です。
「で済ます9割」──これが日本の中小企業文化の本質です。
・「まあ口で言えば伝わるだろう」で済ます。
・「次から気をつけてね」で済ます。
たいていは、会議室ではなく、立ち話のように交わされます。
誰もメモを取らず、記録も残らず、そのまま風のように消えていく。
・「報告書まではいらないだろう」で済ます。
本来、文章にすべきものが言葉で流れ、
共有すべき仕組みが“で済まされる”。
やがて、こうした会話が社内の常識になり、
**「あの時言ったよね」**という言葉が合言葉のように飛び交います。
でも、実際にその場にいたのは数人だけ。
“言われたような気がする人”と、“聞いていない人”が同時に存在する。
このシステムは、たった一人の「知らない人」で崩れます。
それが“属人的経営”の最大のリスクです。
だからこそ、仕組み化が必要なのです。
“通達”とは、単なる文章ではなく、
こうした「曖昧な伝達」を再現可能な形に変えるための仕組みなのです。
1.3 再現性とは「同じ結果を誰でも出せる仕組み」
では、再現性とは何でしょうか。
それは「マニュアルを守ること」ではありません。
**「考え方を共有すること」**です。
マニュアルは、行動をそろえます。
しかし、「なぜその手順なのか」を理解していなければ、
人が変われば、結果も変わってしまいます。
つまり、再現性とは“形”ではなく“思想”の問題です。
そして、その思想を組織に定着させる装置こそが「通達」です。
通達は「命令」ではありません。
現場が迷わないように導く“設計図”であり、
人が変わっても同じ判断ができるようにする“言葉の仕組み”です。
再現性は、情熱ではなく構造で生まれます。
その構造を言葉で残す文化こそが、会社を強くするのです。
1.4 AI時代、再現性は“デジタル化できる文化”へ
かつて再現性は、「職人の勘」や「経験の共有」に頼るしかありませんでした。
そのため、ベテランの退職は“会社の記憶喪失”を意味したのです。
しかし、ChatGPTの登場により、再現性は**“デジタル化できる文化”**へと進化しました。
AIは、人の曖昧な経験を構造化し、
「誰が読んでも同じ結果が出せる」言葉に変えることができます。
つまり、再現性は“努力”から“設計”の時代へ移ったのです。
AIが書き、人が決める。
人が感じ、AIが整える。
この融合こそ、これからの経営の姿です。
そして、AIを通じてようやく私たちは、
“再現される組織文化”を自ら設計できる時代に入りました。
では、あなたの会社ではどうでしょうか。
「再現性」という仕組みを、設計できていますか?
🔜 次章では、再現性を支える“構造の力”を掘り下げます。
銀行文化に息づいていた「通達筋」という見えない仕組みを紐解きます。

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