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【26】銀行業務が好きだったのに、嫌いだった──元銀行員のキャリア妄想と本音

「私は、銀行の仕事が好きだったんです。でも……嫌いでもありました。」

銀行で20年近く働いてきた私が、いま改めて思うのは、この矛盾した感情です。

目次

好きだったのは、「社長と一緒に目標に向かう」こと

中小企業の社長から事業の話を聞く。
「なるほど、これは面白い」と心からうなる。
その思いや構想に、融資という形で応える──。

もちろん、私たちはベンチャーキャピタルではありません。ハイリスク案件には手を出せません。
でも、可能性を感じる事業に現実的な着地点を一緒に探っていく。
このやり取りは、銀行員として本当にワクワクする瞬間でした。

嫌いだったのは、「数字のためだけにお金を動かす」こと

一方で、どうしても納得できなかったこともあります。

たとえば、ノルマのために、無理に融資枠を膨らませる。
お客様にとってベストなタイミングではないにもかかわらず、運用商品や保険を提案する。
本部が“売れ”というから、営業店は“売らなければならない”。

「今が買い時です」とは言えない──でも、それ以上に“アウトだらけ”の現実

「今が買い時です!」
このセリフは、断定的判断の提供に該当します。コンプライアンス上、一発アウトです。
でも、私が本当に言いたいのはそこじゃありません。

アウトなのは、このセリフだけじゃない。むしろ、そんなのは氷山の一角です。

本部はマーケット環境にかかわらず「売れ」と言う。
「短期目的はダメ」「ちゃんとした実需か?」と形式的に確認する一方で、
実際は“売上ノルマ”というプレッシャーで現場を押しつぶしていく。

そして私は、心の中でこうつぶやいていました。
「90%以上の銀行員が、何かしら“建前”の中で嘘をついているのではないか」と。

でも、現役の人は誰も口に出せない。
だから私は、いまここで、声を小にしてそっとつぶやかせていただきます。

「社長の役に立ちたい」──その思いだけで、ここまで来た

それでも私が銀行を辞められなかったのは、「社長と話せる楽しさ」があったからです。
事業への情熱や葛藤を直接聞ける、あの時間が本当に好きでした。
応援したくなる人たちと出会えたから。
きれいごとだとわかっていても、その気持ちを捨てきれませんでした。

そして今、メーカー勤務で見つけた“本当のやりがい”

現在はメーカーで働いています。
自社製品の魅力を心から信じています。
「この製品を知らずに困っている人を助けたい」と、本気で思える仕事です。

誰かに「売らされる」のではなく、「売りたい」と思えるものを扱える。
こんなに幸せな仕事は、銀行時代にもなかったかもしれません。

しかも、お客様は変わらず“中小企業の社長”。
私が一番好きだった仕事の本質は、ここにもあるのです。

FP1級、宅建──資格は「武器」にも「翼」にもなる

頭の悪い私の小さな自慢ですが、FP1級と宅建を取得しています。
……とはいえ、これも今となっては「過去の最大瞬間風速」みたいなものです。

でも、不思議なもので、資格を取ると銀行内での評価がガラッと変わるんですよね。
上司や役員から声をかけられたり、提案書に名前が載ったり──
直接的な昇進だけではなく、「間接的にチャンスが舞い込んでくる」
これが、資格取得の一番おいしい副産物かもしれません。

転職サイトでも、資格を登録しておくと、いろんな求人が表示されます。
でも、そこで「直近10年のメンテナンス状況」なんて、誰も聞いてきません。

結局、見られているのは“今何ができるか”より、“何を持ってるか”だったりします。
だからこそ、肩の力を抜いて、「ちょっとスケベ心で資格を取っておく」のも、悪くない選択なのです。

ふと覗いた「日経転職版」──銀行にも変化が起きていた

ある日、スケベ心で「日経転職版」を覗いてみたのです。
転職の予定もないのに──いや、ないからこそ気楽に。

すると驚きました。ジョブ型採用が、思った以上に広がっていたのです。
時代は変わりましたね。

  • FP1級を活かせるポジション
  • 事業承継や遺言信託など、お客様としっかり向き合える業務
  • メガバンクや地銀本体の財務・市場関連職

以下は日経転職版に実際に掲載されていた求人の一部です

出典:日経転職版(2025年5月時点)

年収は400万円〜1,500万円と幅広いですね。
プロパー部長クラスで1,200~1,500万円程度、中途のキャリア採用はその下のレンジ。
40代のそれなりのキャリアの人なら
おそらく実際の着任水準は700万〜1,000万円前後ではないでしょうか。

金額的には「めちゃくちゃ魅力的」とまでは言えず、キャリアを切ってまでは悩みどころですね。
ただ、考え方によっては「好きな仕事を、ずっとできる」ならば、十分アリだと思います。

疲弊して、病むくらいなら、調べればいくらでもあります。
資格はあった方が、採用される確率が高く、処遇もよさそうですね。

なかなか社内のAO制度はチャンスも少なく、限定的。
他行の転職先のトレンドを先に見て、そこから採用されるように動く、そんな後付けで追いかけてもいいのでは?

「出世レース」じゃなくてもいい──自分の専門性を磨くという選択

「銀行のプロパーコースじゃないと…」
そんな声もありますが、もう時代は違います。

出世やライン長を目指さずとも、
好きな業務に特化した専門職として、銀行に戻る道もある。
経験と資格を掛け合わせて、他行でキャリア採用されるという新たな選択肢です。

最後に:スケベ心で覗いてもいい、「日経転職版」

もしあなたが、今の銀行業務にモヤモヤしているなら。
もしあなたが、「好きな仕事だけ続けたい」と思っているなら。

ちょっとだけスケベ心で、「日経転職版」を覗いてみてください。
想像以上に、あなたの経験と資格が活きる“居場所”が広がっているかもしれません。

銀行員としての経験をどう活かすか。
それは「肩書き」や「出世」ではなく、「どんな仕事を、どんな気持ちでやるか」で考える時代になったのです。

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この記事を書いた人

ginkariのアバター ginkari MANAGING DIRECTOR

銀キャリ /

こんにちは、銀キャリへようこそ!
私は、銀行業界で約20年経験を持つ現役の経営者です。これまで、法人営業や資産運用アドバイザーとして働き、多くの企業や個人の財務面をサポートしてきました。

現在は**「銀キャリ」というブログを運営しており、主に銀行員のキャリアアップや転職に関する情報を発信しています。
私自身、銀行員から経営者に転身した経験があり、まだ経営者としては3年**を過ぎたばかりの新米ですが、この経験を通じて読者の皆様にお伝えできることが多いと感じています。

ブログの目的は、銀行員のキャリアを見直すこと。
ファイナンシャルプランニングの専門知識を活かして、キャリアに役立つ情報や投資に関するアドバイスも提供しています。

このブログが、皆様のキャリアをより豊かにするためのヒントやアドバイスの源になることを願っています。

リアルとフィクションを9:1の割合で混ぜて発信。
出典があるもの以外は“読んで楽しむ用”です。
信じるかどうかは、あなたのキャリア観次第。

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