はじめに
「今さらそんなことしても、もう遅いですよね?」
そう言いたくなる気持ち、わかります。
でも──
“次は、ない”かもしれないからこそ、“いま”なのです。
銀行員のキャリアは、早ければ50代前半で実質の終点を迎えます。
出向が決まってからでは遅いのです。
戻る道も、選ぶ余地も、ほとんど残っていません。
だからこそ、“その前”に、一度だけ立ち止まってみてください。
「人生の棚卸し」とは?
人生の棚卸しとは、これまでのキャリア・スキル・人脈・価値観を見える化して、
“これからのキャリア”を選ぶための土台をつくる作業です。
• 自分に何ができるのか?
• どこに価値を出してきたのか?
• これから何を大事にしたいのか?
これが整理できないまま出向や転職を迎えてしまうと、
人生が「流される側」になってしまいます。
ワーク①:職務の棚卸し
過去から現在まで、担当してきた仕事を書き出してみましょう。
• 担当した業務(例:法人融資、個人資産運用、年金、相続対策など)
• 数字で示せる成果(件数、金額、表彰など)
• 「誰のために」「何を解決したか」
• 自分が工夫した点や、他者と違うアプローチ
ポイントは、“肩書き”ではなく“中身”で語ることです。
ワーク②:強み・価値観の棚卸し
「何をやってきたか」だけでなく、
「どんな姿勢で向き合ってきたか」も大切な要素です。
• あなたが仕事で大切にしてきたことは?
• 「任せてよかった」と言われた場面は?
• 困難をどう乗り越えたか?
• 喜びを感じた瞬間はどこですか?
これらは、履歴書や面接で語る際にも生きる、“自分の軸”になります。
ワーク③:人脈と信頼の棚卸し
あなたがこれまで築いてきた“つながり”を、あらためて見直してみましょう。
• 仕事を通じて信頼を得た顧客や経営者
• 社内外で相談を受けた経験
• 「あなたじゃないと」と言われたこと
• 今でも連絡を取れる人は誰か?
この中に、あなたの“次のキャリア”のヒントが眠っているかもしれません。
【ポイント】
棚卸し=転職ではありません。
あくまで「振り返り」なのです。
おわりに:動けるうちに、棚卸しを。
いま、現場に立っているなら、まだ間に合います。
出向を言い渡されたその日から準備を始めるのではなく、
その前から「備えておく」ことが大切です。
「次はない」と分かっているからこそ、今やるべきなのです。
次回は、棚卸しで見えてきた「強み」をどう“言語化”し、
転職市場や新しい職場で「価値ある人材」として伝えるか──
“言葉の翻訳”のコツを、一緒に整理していきます。
銀行が用意してくれない未来は、自分でつくるしかありません。
そのための最初の一歩が、この棚卸しです。
完璧じゃなくていい。まず書き始めることからです。
次回:「自己紹介テンプレート──“私は何者か”を簡単に伝える技術」へ続きます。