動かないという選択──休めるのは、個人の特権です
営業の現場では、「今がチャンスです」「相場が動いています」と、つねに動くことが正しいように語られます。
しかし、本当に大切なのは、“動かないという選択肢”を持てるかどうかではないでしょうか。
機関投資家には、休むという選択がありません。
決算があり、運用方針があり、売買を繰り返さなければならないからです。
一方、個人にはその制約がありません。
“休む自由”があります。
これは、情報量で劣る個人にとって最大の武器だと私は思っています。
「まず濡らす」営業という考え方
私は長く外貨建ての年金保険を取り扱ってきましたが、いつもこうお伝えしてきました。
今すぐに始めなくても大丈夫です。
でも、動きたくなったときのために、準備だけはしておきましょう。
あるお客様には、「今の為替は少し高いですが、金利は悪くないので、もし〇〇円台に近づいてきたらご案内しますね」とお伝えしていました。
こちらから無理に進めず、まず関心を持っていただく。
その上で、お客様のタイミングに合わせて連絡を差し上げる。
結果として、そのお客様は数週間後、為替が動いたタイミングで自然にご来店くださり、契約へとつながりました。
このような営業スタイルを、私は心の中で「まず濡らして、あとは待つ」と呼んでいます。
動かないという力
「今、申し込まないと損です」と言わなければ動かない商品は、本当に良い商品とは言えません。
「今でなくても構いません」と言える営業こそが、お客様に安心感を与えます。
そしてこの言葉は、お客様だけでなく、自分自身にも向けるべきだと私は思っています。
「今は休む」という判断ができる人間でありたいと、いつも思います。
営業でも、資産運用でも、人生でも、止まる力は、進む力と同じくらい価値があります。
焦らず、構えて、備えて、待つ。
それが、個人にしかできない最高の戦略です。
次回は、私が「これは良い」と心から思った商品を、自分で買いに行った日の話です。
まさかの展開だったのは、窓口の担当者に説明していたつもりが、逆にその方が申し込んでくれたということ。
「売ろうとしたわけじゃない。でも、本気で語ったら伝わった」──そんな体験でした。
そしてそれは、私の営業観を大きく変える出来事になりました。
ぜひ、次回の記事もお読みいただけたら嬉しいです。

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