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【7】【第1話】あの頃、社長に憧れて──銀行員から現場へ、そして経営へ

2025年4月5日|銀キャリ

社長って、なんであんなにカッコよかったんだろう──。
銀行員のキャリアから、現場を経て経営の道へ。すべての原点を語ります。


目次

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  • あの頃、社長に憧れて
  • 社長と“本気の話”がしたい──銀行員という選択
  • 海外駐在で出会った、本気の現場
  • 帰国後に感じた「違う、ここじゃない」という違和感

あの頃、社長に憧れて

「社長って、なんであんなにカッコいいんだろう?」
それが、すべての始まりだった。

私の父は、祖父が営んでいた会計事務所の税理士でした。
その事務所は祖父の自宅にあり、私たちの家とは別。けれど私は、なぜか頻繁にそこへ遊びに行っていました。

玄関を開けると、スーツ姿の“社長”たちが次々と出入りしていました。
皆どこか堂々としていて、自信に満ちていて、でも父の前では少しだけ素の顔を見せる。
私はただその横で、じっと会話に耳を傾けていたのです。

「社長って、何か特別な存在なんだな」
そう思うようになったのは、ごく自然な流れでした。

一方で、家ではこう言われて育ちました。
「絶対に商売はするな」「税理士にもならなくていい」
父からも、母からも、将来に対しての勧めはどこか慎重でした。
「この商売も、お前の時代はもう見えないから」──そんな言葉を何度か聞いた記憶があります。

それでも私は、社長たちの話が、どうしようもなく好きでした。

学校の成績はひどいもので、とても税理士になろうなんて考えもしませんでしたが、
他の子が漫画やゲームに夢中になる中、私は経営者たちの言葉に心を奪われていたのです。

「この人は、どんな会社をやっているんだろう?」
「なんでそんなことをしたんだろう?」

そう考えるのが、私にとっての“遊び”でした。
ちょっと変わった子どもだったと思います。
でもそれが、今の私のキャリアの原点です。


社長と“本気の話”がしたい──銀行員という選択

進路を真剣に考え始めた頃、頭に浮かんだのは、ひとつのシンプルな願いでした。
「社長と、毎日、本気の話ができる仕事がしたい」

あの頃の私は、まだ何者でもありませんでしたが、確かに“誰と、どんな時間を過ごしたいか”だけははっきりしていました。

その願いに一番近いのが、銀行という場所だったのです。

企業の資金繰りを支え、経営者の悩みに耳を傾ける。
夢を語る声も、苦しい決断も、真正面から受け止める。
そして何より、若いうちから社長と対等に向き合える──そんな環境は他にはない。そう思ったのです。

実際に銀行に入ってからの毎日は、まさに“生きた経営の授業”でした。

「おう、先月の数字見たか?」と試算表を広げながら話してくれる社長。
「この設備投資、やるべきか迷っててさ」と、迷いを打ち明けてくれる社長。

そこには、教科書では絶対に学べない現実の経営がありました。

その一言一言が、私にとっては宝物のような学びであり、心からの喜びでもありました。


海外駐在で出会った、本気の現場

そんな日々の中で、ひとつの大きなチャンスが巡ってきました。
海外駐在のポストです。

そこには、これまでに出会ったことのないタイプの“社長”たちが待っていました。

オフィスも工場も何もないところから、ゼロから立ち上げる社長。
スーツを脱いで、現地社員と一緒に汗をかく社長。
「とにかくやってみよう!」と、悩むよりも先に動く社長。

──どの人も、圧倒的なスピード感とエネルギーを持っていました。

私は次第に確信するようになりました。
「元気な社長と会いたいなら、日本よりも海外だ」

それはただの印象ではなく、3年間の現地駐在を経て、骨の髄まで染みついた感覚です。

私が本当に話したかったのは、
机の上の理屈ではなく、現場の匂いがする社長たちだったのだと、心から気づきました。


帰国後に感じた「違う、ここじゃない」という違和感

3年間の海外駐在を終え、私は本帰国となりました。
任されたポジションは、大型店舗の法人課長。
一見すると順当なキャリアにも見えますが、私にとっては明らかに「違う」と感じました。

私は、
「海外経験を全店に展開できる業務につきたい」と言って「ポストチャレンジ制度」に応募しました。
それは、単なる希望ではなく、明確な“志”でした。

なぜなら──
銀行員の仕事とは、お客様の“仕事のすぐそばの話”をすること。
海外展開を目指すお客様にとっては、比較できるリアルな情報こそが必要でした。

他社はどこにどう進出しているのか。
現地で何が起きていて、どんな判断が必要なのか。
数字ではなく、現場の空気や意思決定の感覚を、実体験として伝えられる存在。

私は、それが「海外駐在を経た銀行員」の最も重要な役割だと信じていました。
だからこそ、「全店に展開する本部ポジション」が、自分の次の使命だと思っていたのです。

色々思いましたが、サラリーマンである以上は仕方がないですね。
私が足りなかったのでしょう。

海外赴任をすると、継続研修等を受けられず、資格を取りなおす必要があります。
それで、リハビリと言う名の本部着任がおおいんですね。

私は営業店配属なのでノルマはしっかりあります。
資格がないので、無理やり部下についてきてもらいました。

そしてある人の、冗談めかした一言──
「海外でボケたんじゃないか?」

それを聞いた瞬間、私の中で何かが静かに崩れました。

他にも色々ありましたが、結局この職場は潮時だと思いました。

手を差し伸べてくれたのが、かつての駐在先のお客様でした。

「うちで一緒にやらないか?」

その一言が、私の未来を照らしてくれました。
そして私は、銀行を離れ、メーカーの海外営業職というまったく新しい世界へ、一歩を踏み出したのです。


次回予告

次回は、銀行を離れて飛び込んだ「ものづくりの世界」での“修行の日々”についてお話しします。
──現場で学んだ、汗と鉄のリアルとは?

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この記事を書いた人

ginkariのアバター ginkari MANAGING DIRECTOR

銀キャリ /

こんにちは、銀キャリへようこそ!
私は、銀行業界で約20年経験を持つ現役の経営者です。これまで、法人営業や資産運用アドバイザーとして働き、多くの企業や個人の財務面をサポートしてきました。

現在は**「銀キャリ」というブログを運営しており、主に銀行員のキャリアアップや転職に関する情報を発信しています。
私自身、銀行員から経営者に転身した経験があり、まだ経営者としては3年**を過ぎたばかりの新米ですが、この経験を通じて読者の皆様にお伝えできることが多いと感じています。

ブログの目的は、銀行員のキャリアを見直すこと。
ファイナンシャルプランニングの専門知識を活かして、キャリアに役立つ情報や投資に関するアドバイスも提供しています。

このブログが、皆様のキャリアをより豊かにするためのヒントやアドバイスの源になることを願っています。

リアルとフィクションを9:1の割合で混ぜて発信。
出典があるもの以外は“読んで楽しむ用”です。
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