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【10】「支店長になっても終わりじゃない──銀行員の出世と出向のリアルな末路」

「支店長になれば、もう安心だと思っていた」

そう語ってくれたのは、かつて誰もが一目置いた元先輩

今では関連会社に出向し、“アドバイザー”という肩書を名乗っているものの、実質的な仕事は「何もアドバイスを求められていない」と言います。

銀行の世界では、支店長はゴールではなく、通過点

それどころか、「あのとき支店長になったのがピークだった」と振り返る人も少なくありません。

本記事では、銀行員の一生に潜む“出世レース”と“その後のリアル”を、昇格の裏にある情報戦や社内政治、そして“出向”という現実まで含めて赤裸々に描きます。

定年まで銀行員として生き残れるのは何人なのでしょうか?

目次

第1章|同期で一番最初に支店長になる人の特徴とは?

「聞いた? ○○が支店長になったらしいぞ」

銀行内でこの話題が出たとき、あなたはどんな気持ちになるだろうか。

嬉しい? 焦る? それとも、悔しい?

銀行員にとって、“同期の中で最初に支店長になる”というのは、単なるポジションの話ではなく、「出世コースに乗った」ことの象徴だ。

■ 出世競争の第一関門、それが“支店長”

銀行によって細かな違いはあるが、支店長昇格のタイミングは概ね以下の通り:

  • 🕰 40代前半〜中盤で郊外の支店長に就任できれば順調
  • 🕰 それ以降にズレこむと「次の昇格の波」が難しくなる
  • 🕰 50歳を過ぎても未経験なら「出世競争からは外れた」と見なされる

つまり、支店長になるのが“早いか、遅いか”は、その後のキャリアにとって致命的な分かれ道になるのだ。

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■ 「実力だけじゃない」──なぜ“あの人”が先に支店長?

読者のあなたも、こんなことを思ったことがあるかもしれない。

「同期のAは、正直そこまで営業成績よくなかったのに」
「むしろBの方が実力あると思ってた」

あんなに優秀だったBさんが支店長になれず、関連会社に出向したと聞いたとき、胸がざわついた──。あれは、他人事じゃない。

だが、銀行の出世競争は実力主義だけではない

むしろ、“支店長になれるかどうか”には次のような要素が強く絡んでくる。

🔍「同期最速の支店長」になる人の共通点とは?

要素解説
✅ タイミングポストが空いていたかどうか
✅ 社内政治力上司・人事部・役員への見え方
✅ 評価の安定感異動先でも大きく外さない安心感
✅ 過去の異動歴「昇格ルート」とされる部署を経てきたか

銀行の人事は“パズル”。
実績の良し悪しだけでなく、「今、動かして問題がない人かどうか」が昇格判断に大きく影響する。

■ 早く支店長になれば“安泰”か?

答えは、NOだ。

たとえ支店長になっても、その先の未来には、

  • 不祥事のリスク
  • 支店の格による評価差
  • ポストの競合者

が立ちはだかる。

そもそも出る杭は打たれる文化。
出過ぎると、残るところが面白い。

だからこそ、最初の支店長昇格はスタートラインでしかない。

✍️ 銀キャリ的ひと言

銀行の昇格は「努力×実績×戦略×運」。
どれか一つ欠けても、次のステージに行けない。
早く支店長になることは“幸運”ではなく、“戦略的な成果”でもあるのだ。

第2章|昇格人事は“ドミノ倒し”で決まる

銀行の昇格人事は、よく「ドミノ倒し」に例えられます。

きっかけは、年に一度の役員人事

ここで1つピースが動くと、その下の管理職たちも連鎖的にポストを移動させられます。

■ 昇格ドミノの基本構造

  1. 役員の退任・交代が決定(株主総会・取締役会)
  2. 部長クラスが役員へ昇格
  3. 大型店舗の支店長が部長ポストへ異動
  4. 副支店長が支店長へ昇格

このように、ひとつの動きが連鎖し、最終的に現場の支店長ポストが空くのです。

「今、どこかの役員が動く」=「どこかの副支店長が支店長になるチャンスが巡ってくる」

■ タイミングを逃すと“波”に乗れない

このドミノ式人事で重要なのは、タイミング自分のポジション

つまり、

  • 昇格の“波”が来たとき、
  • 自分がその波に乗れる位置にいるか

それがすべてです。

たとえば、評価は高くても――

  • 支店の成績が振るわない
  • 異動直後で「まだ早い」と見なされる
  • 上司がプッシュしてくれない

こんな状況にいれば、ドミノの波はスルーしていきます

■ 「昇格できる人」と「波を逃す人」の分かれ道

昇格できる人波を逃す人
◎ 昇格ポストが空いた直後に適任者として配置されている× 波が来たときに異動直後 or 低評価ポジション
◎ 人事部・役員との関係も安定× 推薦者がいない or 強く推されない
◎ 昇格候補リストの上位に入っている× 評価は高くても「旬を過ぎた」と思われている

本部マネージャーから支店長に昇格目前だった先輩が、異動のタイミングを一つ外しただけで関連会社に出向となった。

人事とは、残酷なほど“位置とタイミング”で決まるゲームだ。

✍️ 銀キャリ的ひと言

銀行の昇格は、「評価される」ことと「タイミングをつかむ」ことの両立が必要。
どんなに優秀でも、波が来たときに“その場所にいない”と、出世レースはそこで終わる。

第3章|支店長候補たちの“情報戦”と“読み合い”

支店長への昇格は、単なる実力や成績だけでは勝ち取れません。

本部マネージャーや副支店長クラスの人材たちは、「次にどこのポストが空くのか?」を常に気にしています。

「あの支店の支店長は3年目。そろそろ動く頃だな…」
「副支店長のまま5年って、あの人そろそろ昇格するんじゃ?」

そんな会話が、昼休みや喫煙所で自然に飛び交う──。

昇格の鍵は、“誰よりも早く空くポストを察知する力”も必要。

■ 支店長ポストの“任期パターン”

支店長の任期には、銀行ごとの“なんとなくのルール”があります。

  • 都市部の支店:おおよそ2〜3年で異動
  • 地方の中規模支店:3〜4年で異動
  • 海外や本部経由の戻り先支店:半年〜1年のケースも

支店長候補たちは、このパターンを踏まえて「どの支店がいつ空くか」を独自に予測しています。

■ 情報収集と“人事レーダー”の精度が勝敗を分ける?

支店長候補たちは、社内に「情報網」を持っていることが多いです。

  • 仲の良い同期・後輩・先輩から支店の様子をヒアリング
  • 人事部にさりげなく“自分の動向”を印象づける
  • 過去の異動傾向から、誰がどのポストを狙っているかを分析

しかし──

いくら情報を集めても、最終的に決めるのは“人事部”
いろいろ言いますが、競馬の予想屋さんだらけ。

どれだけ先を読んでいても、昇格の波が来た瞬間に“準備万端の状態”でなければ意味がありません。

■ 昇格は「2年目以降」が勝負

支店長候補にとって、着任から2年を経過したあたりからが勝負所。

特にコンプライアンス違反は致命的
本人の不注意だけでなく、部下のトラブルも含めて「昇格延期」「待機リストから除外」というケースは珍しくありません。

■ 支店長待ちリストは“生きている”

銀行の人事部には、実質的な「昇格予備軍リスト」が存在しています。

このリストは固定ではなく、日々変動しています。

第4章|支店長でも神頼み|部長・役員昇格の不確実性

「支店長になればもう安泰」──そんな時代は終わりました。

支店長になったとしても、その先の部長・役員昇格は、実力だけではどうにもならない“運と不可抗力の世界”

「成績は優秀。評価も高い。次は自分の番だと思っていた──」

そんな支店長が、ある日突然、出向を告げられる。

■ 昇格が吹き飛ぶ“3つの外的要因”

部長・役員昇格の判断には、本人の努力以外にも様々な要因が影響します。

  • ① 部下の不祥事
    本人に非がなくても、店舗でトラブルが起きれば「管理不足」として昇格が延期される。
  • ② 支店でのコンプライアンス違反
    小さなチェック漏れも「支店長の責任」。マイナス評価となり波に乗れない。
  • ③ 推薦が割れたとき
    部長昇格候補が複数いた場合、「誰を上げるか」は役員同士の調整で決まる。推薦力の差で落選も。

■ 部長になるには“順番”がすべて

部長ポストは非常に限られており、役員の退任とリンクした少数のイスしか存在しません。

そのため、

  • 上位の誰かが辞めるか異動しない限り、空きが出ない
  • 別の支店長が強く推薦されていれば、その人が優先される
  • タイミングを逃すと、もう“チャンスがない”年齢に突入する

まさに“神頼み”。ここで昇格できるかどうかは、本人の実力を超えた運の領域に入ってきます。

■ 役員昇格は“公開されないレース”

さらにその先の役員昇格は、もはや“誰と戦っているのか分からないレース”。

候補者同士が表には出ない中で、

  • 社長・副社長からの引きがあるか
  • 過去の実績・出身部署・経歴がどう評価されるか
  • 会社の方針(若返り・多様化・改革派登用など)

といった要素で、突然指名されるか、静かに外されるかが決まります。

支店長までは「見える昇格」。
部長から先は「見えない選抜」──。

「あれ?あの人がコンプラ部長?」と思わず心の中でつぶやいた──
そんな不可解な人事すら、銀行では珍しくない。

第5章(最終章)|出向・役職定年|キャリアの着地と“次の選択”へ

銀行員としてのキャリア──

その“ゴール”が、必ずしも晴れやかなものとは限りません。

順調に支店長へ昇格し、評価も高く、社内での存在感も十分。

それでも、多くの銀行員がたどり着くのは「出向」、そして「役職定年」という現実です。

■ 出向という“静かな幕引き”

55歳を前に、「次は関連会社へ」と静かに告げられる──。

その瞬間から、銀行本体のキャリアは“終了”となります。

  • ⚠️ 担当はあるが裁量はない
  • ⚠️ 組織の外で“銀行の人”として働く違和感
  • ⚠️ 給与は20〜40%減も珍しくない

執行役員にまでなっても、これは避けられないのかもしれません。

「支店長だった自分が、また営業マンに?」

そんな声が、出向先では日常的に聞こえてきます。

■ 役職定年という“立場の消失”

さらに60歳を前に、役職は外れ「シニアアドバイザー」「専任職」などの肩書きに変わります。

業務量は軽くなる一方で、影響力・収入・部下の有無すべてが縮小。

  • 周囲の視線:「昔はすごかった人」扱い
  • 自己認識:「もう“居場所”がない」感覚
  • 次の人生:「今さら転職?起業?」という不安

これは、誰にでも訪れうる未来です。

■ 「どう終えるか」は「どう生きるか」

銀行員としての人生をどう締めくくるのか──

その答えは、支店長になった時点で考えておくべきです。

  • ◎ いつか来る出向を前向きに受け入れる準備
  • ◎ 本部や現場で“今いる場所”をどう使い切るか
  • ◎ 銀行の外でも通用するスキル・人間関係を意識する

“出世”がすべてではない。

でも、“どう終えるか”は、その人がどう生きてきたかを映す鏡でもあります。

✍️ 銀キャリ的ひと言

「支店長になって終わり」ではなく、“その先”をどう選ぶかが、キャリアの本質。

次の記事では、支店長経験者が出向先で直面するリアルを紹介します。

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この記事を書いた人

ginkariのアバター ginkari MANAGING DIRECTOR

銀キャリ /

こんにちは、銀キャリへようこそ!
私は、銀行業界で約20年経験を持つ現役の経営者です。これまで、法人営業や資産運用アドバイザーとして働き、多くの企業や個人の財務面をサポートしてきました。

現在は**「銀キャリ」というブログを運営しており、主に銀行員のキャリアアップや転職に関する情報を発信しています。
私自身、銀行員から経営者に転身した経験があり、まだ経営者としては3年**を過ぎたばかりの新米ですが、この経験を通じて読者の皆様にお伝えできることが多いと感じています。

ブログの目的は、銀行員のキャリアを見直すこと。
ファイナンシャルプランニングの専門知識を活かして、キャリアに役立つ情報や投資に関するアドバイスも提供しています。

このブログが、皆様のキャリアをより豊かにするためのヒントやアドバイスの源になることを願っています。

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