📅 2025年4月1日
✍️ 銀キャリ
✅ 偉い人ほど銀行を去る?
「出世=銀行を去る確率が高まる」
──この言葉に、あなたは違和感を覚えるでしょうか?
それとも、どこかで「そうかもしれない」と感じていますか?
実は、この逆説は銀行業界では“あるある”になりつつあります。
若い頃は「本部に行きたい」「部長になりたい」と上を目指していたはずが、あるタイミングから、出世した人ほど静かに姿を消していくという現実に気づき始めるのです。
そのカギを握るのが、55歳で訪れる“役職定年”です。
この年齢を超えると、多くの銀行で管理職から外れ、年収も2〜4割程度減少します。
もちろん、近年では雇用延長の議論が進み、55歳を過ぎても支店長などの役職にとどまるケースも一部では見られます。
しかし、そうした延長措置はあくまで例外。若手の昇進ポストを圧迫するという組織的課題もあり、現実には「55歳で役職を外れる」という運用が今も主流です。
実際、あなたの周囲に58歳の現役支店長がどれほどいるでしょうか?
ほとんど見かけないとすれば、それが業界の“標準ルート”だという証拠です。
ある40代後半の本部課長は、こんな本音を漏らしました。
「部長になれば安泰だと思っていた。でも、そこからが“出口戦略”の始まりだったなんて…。正直、想像と違いました。」
“出世した先に何があるか”──その現実を知っている銀行員は、実はあまり多くありません。
キャリアの最終盤に差し掛かったとき、はじめて直面するこの現実に、多くの人が戸惑います。
けれど、いずれ誰もが通る道です。
そして、その準備は思っているよりも早く始める必要があるのです。
✅ 転籍しか選択肢はないのか?
銀行員にとって、「出向」は避けて通れないテーマです。
ある日突然、辞令一枚で知らない会社に送り込まれる──それが現実です。
しかも、出向は業務命令であり、基本的には拒否できません。
行内での立場を考えれば、「行きたくない」と口に出すことすらはばかられる空気があります。
出向先は、グループ会社であったり、取引先であったりと様々。
最初のうちは銀行から給与が支給されるため、表面的な処遇に大きな差は出ません。
そのため、「とりあえず行ってみるか」と流される人も多いのが実情です。
しかし問題は、その先にあります。
数年後──
人事部からこう告げられるのです。
「そろそろ、出向先とあなたの今後について話し合いをしたいと考えています」
つまり、転籍の打診です。
形式的には「本人の意思に基づいて転籍する」形になっていますが、現実はもっと曖昧です。
“戻る場所がない”という空気の中で、「ここで頑張るしかない」と腹をくくる人も少なくありません。
近年では、自ら転籍を選ぶ人の方が増えてきているというデータもあります。
背景にあるのは、銀行という組織の変化。
「居場所は自分でつくるもの」という考え方が、徐々に浸透してきているのです。
ある先輩は、こう話してくれました。
「最初は“出された感”が強かったけど、いまは転籍してよかったと思ってる。自分の意思で動いたって感覚が持てたのが大きいね。」
この言葉が印象的だったのは、「転籍先に行ってよかった」ではなく、「自分の意思で選んだと思えたこと」が満足につながっているという点です。
キャリアの舵取りを誰に任せるのか──
命じられるまま動くのか、自分で進路を選ぶのか。
同じ転籍でも、その意味はまったく違ってきます。
🔹 頭取・役員クラスの転職先は?──“名誉職”ではない再登板のリアル
かつては“天下り”という言葉に象徴されるように、金融トップの退任後は語られにくい話題でした。
しかし現在では、**「再登板」「知見の継承」**といった前向きな文脈で、頭取・役員クラスのセカンドキャリアが公になりつつあります。
例えば、最近の報道では以下のような動きがありました。
🏦 三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)
- 國部 毅 氏:2025年6月に会長を退任し、特別顧問に就任予定
📌 出典:朝日新聞デジタル(2025年3月)
🏦 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)
- 永易 克典 氏:三菱UFJ信託銀行の会長に就任
📌 出典:日経新聞(2025年3月)
🏦 みずほフィナンシャルグループ
- 佐藤 康博 氏:日本取引所グループ 取締役に就任
📌 出典:ロイター(2025年3月)
🏦 りそなホールディングス
- 南 昌宏 氏(前社長):全国地方銀行協会の特別参与に就任(調整中)
📌 出典:読売新聞(2025年4月)
こうしたポジションは一見すると「名誉職」のように見えがちですが、実際には、
- 経済界・政界とのネットワーク維持
- グループ全体のガバナンス補強
- ステークホルダーとの信頼構築
といった**“裏方の要職”**を担っており、引き続き重責を担う立場です。
👁🗨 キャリアは、続いていく
「頭取を務めたら引退」──そんな時代は、もう過去のものです。
フィールドが変わっても、信頼と戦略眼を持つ人材は、どこでも必要とされています。
グループ内に限らず、経済界・政界、そして地域社会。
その知見を活かせる場所は、実は広く、深く、そして今も広がり続けています。
戦場が変わっても、求められるのは「信用」という最大の資産。
“引退”ではなく、“再登板”。──それが2025年の金融トップのリアルです。
この記事はここまでです。
キャリアは決して「ゴール」ではなく、「続き」があるもの。
銀キャリは、そんなあなたのこれからを、これからも応援していきます。
